二匹目のドジョウについて

出版社に勤めていた頃、数多くの持ち込み企画に目を通しましたが、
非常に気になっていたことなので、
少しはっきり言おうかなと思います。

それは何かと言うと、
ヒットした本を真似し、アレンジを加えた、
いわゆる「二匹目のドジョウ」本の企画を
提出する方が少なくないということです。

何を言いたいのかですが、
柳の下の二匹目のドジョウを狙うより、
自分のブランドが発揮される企画を考えてみたら、
いかがでしょうか、ということです。


まずは、私の経験から言いますね。

ブログを楽しみに読んでいる方がいらしたら、
意外に思うかもしれませんが、
私は過去に、割とヒット本の二匹目のドジョウを狙うこともしていました。

たとえば、マーケティングというテーマで売れるものというのは、
私はいかに流行を押さえるかが大事だと思っていて、
流行に沿った内容の本を出版化させることもしてきました。

そしてマーケティングだけでなく、
そのほかのテーマにも手を出しています。

上司本やビジネススキルなども、
さまざまなヒット本をアレンジしてみましたが、
芳しい実績を出すことはできなかったのです。

昔の話になるのですが、
編集者として実績を上げていたある方は、
柳の下に三匹はドジョウがいるというようなことをおっしゃっていたので、
もしかしたら、私だけの話かもしれません。


しかし、それでも、やはり大きくヒットした本の類似本を出すのは、
今の時代、かなりリスキーに思います。

理由はいろいろとあると思うのですが、
一番大きい理由として、
類似本は、オリジナル本の権威を高めるだけの存在になりがちだからです。

なかなか本が売れにくい時代に突入しているため、
その中でオリジナル本が売れているのならば、
出版社も書店もそのオリジナル本を大きく売っていこうとします。

すでに売り場でオリジナル本がコーナーを占めているなか、
平積み点数を増やしていくのは並大抵のことではありません。

オリジナル本に迫るほどの売上を出さない限りは、
最初は良くても先細りする恐れがあるということは、
認識しておいたほうがいいでしょう。

それに、一般のお客様も「売れているから類似本が出た」という認識しか持ちませんし、
人によっては、嫌悪感も抱きかねません。

結局、オリジナル本がどれだけ売れているのかを証明するだけの
引き立て役になる可能性も低くはないのです。

そのため、「このテーマで本を出せば、二匹目のドジョウで売れる」という紐付けは、
実は大きなリスクがあると考えておきましょう。


前のブログで、アベレージヒッターを心がけていると言いましたが、
こういうリスクは当然、回避していきますし、
私以外の編集者さんも同じように感じている方は少なくないでしょう。

それより、自分の持ち味をフルに活かせるテーマは何か、
自分ならこんな悩みだったら解決できると自信のあるものは何か、
など、自分発信の企画の方が実は、売れる可能性は高いです。

マーケティングに詳しい方や事業家などは、
共通認識でしょうが、どういう人に読んでもらうのかの読者設定をし、
自分はどんな解決ができるのかを考えることが大事です。

何がヒットしているかは追わず、
自分ならどういう発信ができるかにこだわって、
出版企画を考えることをお勧めします。

自粛されている方、出版企画、考えてみましょうね。

それでは、また!


追伸:
岡江久美子さんの悲報、驚きましたね。
志村けんさんといい、
なぜ感じのいい方々が立て続けにお亡くなりになるのか、
本当に残念でなりませんね・・・。
ご冥福をお祈りいたします。