初めて担当した本の思い出

昨日、記事を書いた後、
私の人となりを知ってもらうには、
「ストーリーで語った方がいいのかな」と感じました。

昨日の記事が、ただの理想だと思われないようにするために、
過去の思い出話を定期的に書いていこうかと思ったんですね。

長くなってしまいましたが、少しお付き合いください。

入社して数日たったある日、
当時の社長から「担当になってくれ」と原稿を渡されたのです。

なんだか編集者の第一歩を踏めたんだなと実感がこみ上げてきて、
嬉しかったのを覚えています。

もともとビジネス書なんて読んでこなかったし、
ずっとアルバイトをしてきたけど、仕事面で褒められたことがありませんでした。
それだけに、はたして編集の仕事を任せてもらえるのは、
まだ先になるなどと、思っていたんですよね。

このことを考えると、改めて前職の社長には感謝しないとなって、思います。

では、最初の担当本は、どんな本かというと、
タイトルはそのままズバリ、
「時代劇・剣術のことが語れる本」。

食事をすることを忘れるくらい、
宮本武蔵に心酔しているなら話は別ですが、
20代中盤くらいの私には正直関心の薄いテーマでした。

聞いたことがない剣豪が、どのように剣術を身につけ、
どのようにして生涯を終えるのか。

読んでみると、なかなか面白い内容ではあるのですが、
知識が乏しいだけに、どこをどう直したり、
提案していいのか、わかりません。

それでも手を入れなきゃということで、
私なりに文章を整えるための赤入れをし、
先生にゲラ(校正原稿)をお送りしたところ、
翌々日の朝出社してすぐ、私あての電話が鳴り響いたんです。

声の主は、烈火のごとく私を叱りつける、その著者さん。

この方は、もともと海上自衛隊で防衛部長など歴任された方で、
本当に正義感と礼儀作法には厳しい方でした。

赤入れにはどんな意味があるのかと問われ、
答えられなければしっかりしろと一喝。
返答の仕方が失礼にあたるぞと怒号が飛び、
ひたすら私は「すみません」と答えるしかありません。

これが一度や二度ではなく、
電話を取りついでもらうたびに叱られるため、
受話器を取る手も重く、
気持ちも沈みっぱなしでした。


それでも電話でコミュニケーションを重ね、
周りの方の協力を得ながら、
なんとか予定していた日に本ができたのです。

この著者さんが最後に喜んでくれたのが、非常に印象的でした。


今思えば、非常にありがたい経験でした。

仕事をしてお金をもらうとは、どういうことか。
仕事の厳しさを体感した、初めての編集担当の思い出です。

これを機に、
著者さんがどんなことを考えているのか、
どんなふうにすれば著者さんが力を存分に発揮できるのか、
など、少しずつ考え始めるようになりました。

このことは、編集者としてやっていくために必要なことではあるのですが、
私が編集者として自信を持ったのは、まだまだ後の話。

・・・少し、重い話になったので、明日はライトな話に変えます。
思い出話はまた来週あたり。

それではまた!