読者対象の考え方(先輩と私の違い)

私が入社した当時、ビジネス書でヒットを連発している先輩がいました。
近くで見ていて、その先輩が特にすごいなと思ったのは、
「自分が読みたい本を作る」という確固たる軸を常にぶらさずに持ち続けていたことです。


今、これを読んでいるあなたは、
「それって、そんなに難しいことなの?」と思うかもしれません。

ただ、会社全体のラインナップを考えたとき、
会社の視点ではなるべくこれから出す新刊のテーマは偏らせたくないと考えます。

特に営業出身の役員だったり、普段は現場を見ている営業パーソンは、
テーマの偏りを嫌がるものです。

出版社の営業は、訪問先の書店さんの各コーナーを隅々まで見ていますし、

  • ニーズのあるものを満遍なく揃えたいとか
  • 他社の本が売れているあのコーナーに自社本を用意すべきだとか
  • 一つのコーナーで自社本同士で場所の取り合いは避けたいとか

そう考える傾向が出がちなのはやむを得ないことだと思います。


そんな価値観の人たちに対して、
「自分が読みたい本を作る」というスタンスで居続けるのは、
なかなかハードルが高そうに思いませんか?

もちろん、ヒット書を連発しているため、
その先輩に対して、誰もが信頼している証しでもあるのでしょうが、
反面、売れない状態が続いた時のプレッシャーもあったかと思います。

覚悟を持って、本を作り続けている、本当に尊敬できる先輩です。
そして、古くから出版関係に携わっている方はご存知でしょうが、
なんと先輩は今、経営者として辣腕をふるわれています!

・・・先輩の話も今後、していきたいです。


さて、その先輩からいろいろと教えてもらったのは、3年ほどの間でした。
その中での先輩の一番のメッセージは先ほどから紹介している、
「自分が読みたい本を作る」というものなのです。


私は先輩の口調を真似するところから始めて、
先輩が会社を去った後も、
自分が興味のあるものや克服したい悩みを企画にして、
数回プレゼンに提出してみました。

しかし、全く通らなかったんですよね。

「私にはこんな悩みがあって、こういう風に解決したい」
というのを熱弁しても、審査している方の心に届かないし、
冷静に「売れないでしょう」と言われる日々が続きました。

「何がいけないんだろう」

・・・結構悩みましたよね。

私自身のプレゼンも良くないのでしょうが、
そもそも企画が良ければそこは評価してくださると思っていましたから、
企画にやはり問題があると思い至りました。


そうして、私が長い間考え抜いた企画の考え方はこちらです。

  1. まずは会社が求めるテーマをつかむ
  2. そのテーマを求めている読者層になりきる
  3. どんな本が欲しいのかのイメージを膨らませる


できる限り、このステップを踏めるように企画を考えました。

先輩との違い、わかりますでしょうか?

先輩は読者対象を「自分」に設定しているのに対し、
私は「読者対象になりきった自分」に設定しているのです。

つまり、読者対象は「自分」に他なりませんが、
ある種、なりきるという役者的な要素が入っているのが、
私なりの工夫
だということです。


そして、賢明な方でしたら、
先輩と私と、少し企画の作り方も異なることもお気づきでしょう。

おそらく、先輩の場合ですと、
ゴールから企画を考えるといったスタイルになるのでしょうが、
私の場合、連想に連想を重ねて、
企画を練り上げていくといったスタイルになります。

例えば、営業の本を作るという時に、
「自分が明日、営業部に異動になったら・・・」
「こういう苦難に遭遇するだろうな・・・」
「こういう時、どんな気持ちになるだろうか?」
みたいなことをイメージを膨らませて、
最終ゴールを考えるといった感じです。


私のスタイルがあなたに合うかわかりませんが、
一度、「もし、○○になったら」と考えることから始めてみても、面白いと思います。

それでは、また!