「あなたより文章はうまいから、安心して」に潜む罠

「あなたより文章はうまいから、安心して」

あれは5年ほど前、初めて会った方にこんなことを言われたことがあります。

このセリフの主は、とある金融関係の仕事をされている方。

私の職業を伝えると、
本を書きたいから少し相談に乗って欲しいと言うのです。




そこで、テーマ設定の話など、基本的な出版話を軽くしました。

続けて私は、
「意外と、時間をとって執筆するのが大変ですよ」
と伝えたところ、
少しムッとした感じで冒頭の台詞につながるのです。




でも、よくよくこの話の流れを確認してみると、
首を傾げる箇所があるように感じます。

「文章を教えている先生でも、ここまで文章に自信があるとは言わないんじゃないか」
と、疑念が私の頭の中に居住区を作り始めていたのです。

本当、この手の予感って、当たります。

結局、その方から企画書につけるサンプル文章を書いてもらいましたが、
それはもう日本語ではないようなレベルの怪文でした。

しかも当の本人は「うまい」と思っているわけですから、
こちらの手の打ちようがなく、
ここで出版化については、お断りさせていただきました。




では、なんでこんな話をここまでしたかというと、
「自己評価と他者評価はこんなにも違う」と思うからです。

冒頭の例は、やや極端に思うかもしれませんが、
文章力については偏差値のように客観的に数字で測ることができませんから、
「うまい(下手)と勘違い」するケースは十分に考えられます。




まず、文章がうまくなりたいのなら、
他者評価を受け入れることから始めてみてください。

おそらくですが、その方は周りの人から自分の文章を評価してもらった経験がないのでしょう。
あるとしても、適切なフィードバックを受けていないように感じます。

その方の周りに忌憚のない意見を言える人がおらず、
こと文章向上の機会を逸していたことについては、
不幸だったとも言えます。




ただ、忌憚のない意見を真っ向に受け止めるのも、
きついように思うかもしれません。

「この文章の『それ』は何を指しているの?」
「この文章の主語は誰なの?」
「説明が多くて主張がぼやけている」
「結局、何が言いたいのかわからない」

あまりにも意見が辛辣で凹むかもしれませんが、
それも文章向上のための試練と思い、
「どうやったら良くなるか」を自分なりに考えてみてはいかがでしょう?

この、どこをどう直したらよくなるのかを考えることが、
文章力向上につながります。

それでは、また!